2017年1月21日、18年ぶりの来日を果たしたオランダのクイーン貴公子ロビー・ヴァレンタイン。久々の待ちに待った来日公演に溜飲を下したファンが多くいたに違いない。
往年のヒットメドレーから最新の楽曲まで長年のキャリアを物語る完璧な演奏は、実に充実したステージだった。そんな興奮のアンコールの最中にロビー・ヴァレンタインが「カモン!オーレリア!!」と呼び込み、颯爽と現れた日本人ギタリストがいた事を我々は覚えている。ロビーの最新曲であるブラックレインを共に演奏し、オーディエンスを沸かせ、日本ファンとロビーの間になんとも言えないフレンドリーな空気を生み出して帰っていった。
「・・・彼は、いったい誰なんだ!!?」
という思いを抱いたオーディエンスやファンの皆様の為に、2006年にクイーン遺伝子探求堂VarubaとAureliaが対談した模様を、ここに再掲載したいと思います。
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Varuba オーレリアさんは、ヴァレンタイン・ヴァレンシアといったアーティストがご自身の音楽的ルーツですか?
Aurelia 僕の場合クイーンのDNAがルーツなんです。そこからクイーンやビートルズを知ったというか。ヴァレンタインやヴァレンシアなど、自分が好きになったアーティスト達のルーツを辿っていくとクイーンとビートルズがあるみたいな。ビートルズは中期、クイーンは初期が特にすきですね。どちらも作りこみに入った時期ですね。ただ、ヴァレンシアに関すると初期のプロデュースされたバランスの取れたものがすきですね。
Varuba オーレリアさんとヴァレンシアの最初の出会いを教えてください。
Aurelia 僕が15歳のとき、ヴァレンシアの「ガイア」がヒットしてまして、家族がたまたまFMで聴いたんです。で、僕が好きそうだからという理由で教えてくれたんです。すぐにはラジオでは聞けなかったんですが、シングルの「ガイア」を思わず ジャケット買いして、聴いてもの凄いショックを受けましたね。あのときのことは 忘れられません。確か車の中で買ってすぐに聞いたんですけど、“これはなんなんだ?演劇集団か、映画のサントラなのか?”と。で、女性だと思ってて、デビューアルバム『ガイア』を買ってライナーを読んだら男だと、それで更にびっくりして。でアルバム一枚通して聴いて感激しました。僕が聞きたかった音楽はこれだ!!って思いました。
Varuba なるほど。そこからすぐに音楽をやろうと思ったんですか?
Aurelia そうですね。元々うちは母親が音楽の教師で、父も音楽が大好きなんです。むしろ自然な環境で音楽への方向には向かっていましたね。ピアノやギターは小さいころから触れていたんです。で、高校の入学祝にMacやMTRを手に入れて、一人で音を作れる環境になったんで、思いついたデモを一人で作っていったんです。
Varuba オーレリアさんとヴァレンタインやヴァレンシアの実際の出会いは何時だったんですか?
Aurelia 僕が大学生の時にヴァレンタインとヴァレンシアの合作『V』が発表されるんです。
その来日公演の時に、ファンクラブの当選者限定でバックステージで彼等に会える機会がありました。そこで、ライヴの終了後に実際会ってデモテープを渡したんです。で、その翌年にマーキーと契約したヴァレンシアが再来日したときにインストアイベントで再会したんです。向こうが僕を覚えていてくれて、前に渡したデモに入っていたミスタークラウンっていう自作曲まで覚えていてくれたんです。で 、その時『もっと音楽について話そう』というような流れで彼の来日中にお話しする機会を得ました。そこで『ガイア2』の感想や、自分の音楽をどう思っているかなどの質問を受けて話して、そこで友好を結びました。
Varuba なるほど、凄いめぐり合わせですね。では、その後ヴァレンシアに“オーレリア”と命名を受けた経緯を教えてください。
Aurelia 実際ヴァレンシアと会えた後、ファンサイトのメーリングリストで、彼と直接話が出来る企画があったんです。そこで『覚えてますか?』って感じで。で僕が音楽をやって行くにあたって、アーティストネームをつけてくれないかと半ば強制的に(笑)頼んだんです。その時にいくつか候補をあげてもらって自分で選んだのが オーレリアという名前でした。響きとか字体が気に入ったんで。
Varuba ヴァレンシアのスタジオに行ったときの話を聞かせてください。
Aurelia 当時お世話になっていた方々の計らいもあり、まずは彼と直接メールをやり取りできるようになったんです。で、偶然にもスペインに旅行に行くプランがあったんで、それをヴァレンシアに伝えたら、忙しい中お招きいただいたんです。で、実際自宅兼スタジオに伺って。夢のようなひと時でしたね。一生忘れられないです。ちょうど彼はMetal Majestyのレコーディングの真っ最中でした。そこで実際に音作りのプロセスなんかも彼がやってみせてくれましたし。とにかく親身に指導してくださいましたね。
Varuba それでは、ヴァレンシアのどういう部分がクイーン的だと思いますか?
Aurelia 曲にもよりけりなんですが、近年のヴァレンシアはフレディの声にだいぶ意図的に似せていますよね。ただやはり全体的にはコーラスワークですね。クイーンよりもある種ソフトで分厚くてきれいなコーラスワーク。あとはファルセットがフレディっぽかったりもしますね。ただ、ヴァレンシアのすべてがクイーン的ではなく、要素の一部なだけなんですね。彼が好きなアーティストから受けた影響を(ケイト・ブッシュや、デュラン・デュランなど)をカクテルのように混ぜ合わせて、そこに自分の 曲のオリジナリティもちゃんとあって。
Varuba なるほど。僕はヴァレンタインやヴァレンシアはある種、確信犯だと思うんです。この一部分は明らかにクイーンのこの部分から取ってきてるなと。それはわかる人間にしかわからない。本当にクイーンを愛しているからこそ、本当に素直な気持ちで、影響を受けたから出せるものなのかなと。
Aurelia クイーンはコーラスにしてもギターにしても、色が濃いですよね。わかりやすすぎる個性があるんだと思うんです。なので、いざそれをほかのアーティストが使ってしまうと、盗んだとか思われるんですが、ヴァレンタインやヴァレンシアはただ影響を受けて素直に使っているだけなんですよね。
Varuba フレディもビーチ・ボーイズのハーモニーが大好きで、それを再構築し独自のものに作りかえました。ブライアン・メイも三味線のピッキングや、ハンク・マービンに影響をうけてるんです。クイーン音楽を受け継いで新しい音に再構築する作業は本当に正しく、すばらしいと思います。
Aurelia そうですね。クイーン遺伝子探求堂サイトをみてわかるようにクイーン遺伝子といわれるくらい、すでに多くのフォロワーがいるわけですから、もうすでに一つの音楽ジャンルなんですよね。
Varuba ええ、クイーン的な音を操る人をクイーンの真似事という人が多いなか、これだけのアーティストがそのエッセンスを受け継いでいるんだということを証明したいんですね。一つの音楽スタイルとして確固たる地位にあるものなのだと。あと、クイーンの作った音楽が、どういったものに影響を受けて、そして、後世に人々がどのように受け継いでいくのかを俯瞰したいんですね。
Aurelia 着眼点が面白いですよね。僕なんかにはすごく役に立ちます。以前頂いたコンピ盤(Queen・DNA・Investigation)も知らないものも多かったので。
Varuba オーレリアさんは、今後どういった方向性の音を構築していこうとしてますか?
Aurelia 経歴からするとヴァレンシア的な音をと期待されがちなんで、そこにあまり縛られたくないかなと。それはきっと自然に出てくるものなので、それ以外の90年代後半~2000年代の音楽から登場したテクノロジーなんかもうまく取り入れた音楽をやっていきたいですね。自分でいいと思ったものはどんどん取り入れていきたいし。また、どんな曲をやってもオーレリア印がつくようなオリジナリティを確立したいですね。
Varuba 余談ですが、ショーン・レノンは、お父さんの影響が強すぎて、音楽をやりたかったがなかなか出来なかったらしいんです。でも日本人のオルタナ女性ユニット、チボマットのサウンドを聞いたときに、これだと思って、まったく自由な気持ちで音楽に取り組めたようですね。
Aurelia それでいいんですよね。
Varuba では最後の質問。ずばり、オーレリアさんにとって、クイーン遺伝子とは?
Aurelia クイーンはどんなスタイルの曲をやってもクイーン印がつくと思うんです。その強烈な印を受け継いだものがクイーンDNAなのではないかと。僕も自分にとっての印、オーレリア印を作りたいと思います。
Varuba あくまで僕が思うクイーンDNAなんですが、クイーンの最大の功績って、全く違う音楽をくっつけたことだと思うんです。ロックっていうエッジのとがった音楽とオペラという優雅で上品な音楽、白人音楽となりつつあったロックと黒人音楽の象徴とされるファンク、それらの融合。確固たるスタイルがありながら、いいと思った音楽は何でもやっちゃえ!!っていうスタンスがクイーンらしい部分だと思うんですね。
Aurelia なるほど、その柔軟性は大切ですね。僕もその柔軟性を持ち合わせていないアーティストは本当のクイーンDNAではない気がします。
Varuba 全くそのとおりですね。オーレリアさんの今後の活動が楽しみです。今日は本当にありがとうございました!!
2006年6月 VARUBA宅にてーー
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Aureliaは、ギター以外にもキーボードやレコーディングも行うマルチプレーヤーだ。その雄大な音楽性はヴァレンタインやヴァレンシアに一目置かれる日本人アーティスト。彼の創作するサウンドに触れる機会を、今後楽しみにしていきたい。
▼Aurelia ツイッター
https://twitter.com/AureliaJapan
▼クイーン遺伝子探求堂
http://queendna.amearare.com/
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