【評論】The Bargainsというブリティッシュな幸福。


◆BARGAINSは渋谷系だった!?

自身は2000年に上京し音楽好きが高じて某ブリティッシュロック誌の門を叩いたのだが、その当時日本中を覆っていた“渋谷系”からの影響も計り知れず、御多分に漏れずアンテナの端っこをそちらに向けていた。

自分にとって渋谷系イメージの最たるはピチカート・ファイブなのだが、1990年代にフジテレビ系で放送されていた『ウゴウゴルーガ』のテーマ曲「東京は夜の七時」のイメージが強烈にありピチカート・ファイブのビジュアルイメージだけが思春期の脳裏に刻まれていた。2000年代初頭はピチカートの小西康陽氏などがレコメンドしたアーティストが渋谷のCDショップに並んでいて、渋谷系文化の空気をカタチ創っていた。ロジャー・ニコルズやフリー・デザインなどアメリカの60~70年代のソフトロック系のレコメンが多く、ポップ最上級民たちのハイセンスな匂いをひそかに嗅いでは、それらを吸収しようと必死にあがいていた。

1999年に「コメディ・アンド・トラジティ」でデビューした BARGAINS (現在:The Bargains)は、前述のような渋谷系ブームの真っ只中、J-POPの大海原にその船を漕ぎだした。

同年に発表された1stアルバム『BARGAINS』のアーティスト写真には、若干ピチカートファイブ系のイメ―ジが重なり、ある種その路線で売り出されたのかな?と感じていた。

1stアルバム『BARGAINS』

「コメディ・アンド・トラジティ」のプロデューサーは四人囃子のドラマー岡井大二。Queenを思わせるブリティッシュロック系のゴージャスで濃厚なアレンジは、渋谷系のイメージからは予想だに出来ないポップマニアが泣いて喜ぶサウンドだった。90年代後半のJPOPで、ここまでドラスティックにクイーン風の楽曲を発表していたアーティストは稀有だったので、自身の耳にはすぐに止まった。

デビュー当時のMV
後述する【いきなりステージ】で、ベースにチャイル氏を迎えたバージョンも最高だ。

「コメディ・アンド・トラジティ」=“喜劇と悲劇”。キンクスのレイ・デイヴィスが60年代の名盤『サムシング・エルス』等で掲げていたメッセージ性と一致するという事は、ブリティッシュ音楽を敬愛する諸氏にはすぐにピンとくるタイトル。ブリティッシュロックがルーツの彼らの個性を顕著に表現した楽曲だったが、Queen風サウンドのインパクトと同時に、本来キンクスやホリーズ、ビートルズなどタイトなパブロック系のサウンドの側面が強い彼ら本来の音楽性に比べ、オーバープロデュースになってしまった感も否めなかった。

◆そして、市井の人々への応援歌が生まれた。

2001年に発表された2ndアルバム『Bargains 2』では、本来の彼らの特性を表現したモッズ風な装いにイメージチェンジを図っている。

2ndアルバム『Bargains 2』

このアルバムからは関西圏でほっかほっか亭のCMソングにもなった「ジンセイ」がスマッシュヒットを記録した。

この「ジンセイ」こそ、バーゲンズらしい音楽性がつまった名曲だ。
どこにでもいる、市井の人々への優しいまなざし、すべての夢追い人への励まし。

ジンセイまだまだこれからさ、忍耐よ努力よ”

と歌う普遍のメッセージ。

まさにキンクスのレイ・デイヴィスが持っていた、偉大なる市井の人々、庶民への応援歌を、日本人があらわした記念碑的な作品だった。また、キンクスは英国でいう労働者階級のバンド。「ジンセイ」はそのようなアイデンティティも表現した素晴らしい楽曲だった。

市井の人々と戯れる素晴らしいMV
いきなりステージでの田島氏の歌声は女神のように神々しい。

◆多くの楽曲提供とミニアルバム『I’m home』

2002年以降、バーゲンズは楽曲提供の仕事が多く、英国系のメロディがキラリと光る素晴らしいアンセムを提供し続けている。代表的な3曲を紹介しておこう。

● 山下久美子「恋が死ぬ」 (2002)

● 坂本真綾「ピーナッツ」(2009)※作曲のみ

● 石川ひとみ「わたしの毎日」(2018)

2010年にミニアルバム『I’m home』を発表。

ミニアルバム『I’m home』

『I’m home』収録曲はどれも素晴らしいが、中でも「The song of a little viking」は、勇壮な海賊少年のテーマソングのようで、ピート・タウンゼントのプロデュースでお馴染みサンダー・クラップ・ニューマン「Something in the Air」に匹敵するブリティッシュ系アンセムなので是非とも聴いてみて欲しい。

いきなりステージでの演奏。

◆トーキョーワンダーランドに見る阿吽の呼吸。

バーゲンズのブリティッシュでジェントルなソングライティングは、田島由紀子(Vo,Key)と三宅修一(Gt)の阿吽の呼吸から生み出され、そのメロディセンスは【ザ・バーゲンズ】以外の何物でもない。

日本のブリティッシュサウンドを愛好するソングライターの中でも、相当なメロディメイカーのお二人。
前述の渋谷系のようなイメージで捉えると聴き逃してしまう、珠玉のメロディが眠る宝庫である。

その一端を垣間見れるのは、2016年首都高のイメージソングとして提供した「トーキョーワンダーランド」。
軸となるポップで張りのある田島氏の歌声に、三宅氏の変幻自在のハーモニーアレンジが最高に気持ち良い。

いきなりステージでの演奏
首都高公式MV

◆2020年コロナ禍でいきなり始まった、いきなりステージ!!

“彼らの新たなマテリアルに接したい!”と願望していた2020年4月、コロナ禍の最中に突如として始まった【いきなりステージ】は、ザ・バーゲンズのお二人が自宅で演奏し配信するという好企画。ふたりの声と楽器のみで演奏するサウンドは、長年の音楽家としてのキャリアを十分発揮した素晴らしいパフォーマンスばかりなので、まだ未聴の人は過去アーカイブを猛追して頂きたい!!

いきなりステージ一曲目『Survival』

▼The Bargains公式Youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/TheBargains/videos

▼ザ・バーゲンズの家ライブ『いきなりステージ』をアルバム収録順にまとめてみたっ!!
https://togetter.com/li/1553331

結成から25年を迎え、まだまだ旺盛に音楽に向き合う姿に、お二人の音楽家としての矜持を感じるし、ミュージシャンズミュージシャンの貫禄も漂っている。なにより、いち音楽ファンとしてザ・バーゲンズ の音宇宙にもっともっと浸っていたい。

キンクスを代表とする偉大なる英国ロックを愛する者の、幸福な桃源郷とも言えるザ・バーゲンズの楽曲が、これからも偉大なる市井の人々に届けと願うばかりだ。

世界最小にして、最高のロックバンドThe Bargains。
いいから、彼らを、愛しなさい。

ジンセイまだまだこれからさ~♪♪

2021.11.20
クイーン遺伝子探究堂 VARUBA

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