プログレ×日本×クイーン遺伝子の、正統なる血統。


「クイーンはプログレなのか?」

これは、ロック・ファンの間でも論議が分かれる所でもある。筋金入りのプログレ・ファンからすると、ポップ路線に走ったクイーンをプログレ扱いするのは論外だろう。YESやELPでさえも70年代末期からポップに日和りだし、70年代初期のサウンドを良しとするプログレ原理主義者からは批判の的になったほどだ。

「QueenⅡまでがプログレだ」
「オペラ座の夜までがプログレだ」
「クイーンはプログレではない」

・・個人の趣味趣向によってさまざまな解釈がなされる部分でもあり、ロックバーの酒の肴として、まぁまぁ使える話題でもある。

私見を述べてしまえば「クイーンはプログレではない」

「ボヘミアン・ラプソディ」や「預言者の唄」に象徴されるクイーンの緻密なサウンドは“プログレファンにアピールする事が可能”なのであり、プログレッシヴな要素を多分に含んではいるが、プログレッシヴ・ロックにカテゴリーされるものではないと思う。

(プログレ・ファンの方には怒られそうだが)つい色眼鏡で見てしまうとプログレッシヴ・ロックにはどこか仙人的で、一般大衆を置き去りにして【音楽理論や精神世界がわかる一部の愛好家が、ミュージシャンと共有する世界観にほくそ笑む】ような所がある気がしている。

そのような、限られた人々の音楽になる事を誰よりも嫌ったのがクイーンのフレディ・マーキュリーだったと個人的には思っている(アフリカ・ザンジバル出身でインド育ち、イギリスで専門学校に通い、出っ歯でいじめにあいながら、ゲイやパールシーと言ったマイノリティとして生き続けた、カテゴライズ不可能な彼の青春期に通じるモノが大きい)

クイーンのスタート時から、フレディは一般大衆に向けて曲作りをしていたし、それでいて大衆に迎合する事なく、自身の中にある究極的にプログレッシヴな感性を120%絞りだし、そのまま大衆に向けて発信し「文句があったら言ってみい!」とばかりに、大衆の耳をねじ伏せて、大ヒットをかっさらった稀有なバンドだと、つくづく思う。

そういえば、クイーンのファーストアルバム『戦慄の王女』が1973年に発表された際に、英国の評論家たちは「YESの二番煎じだ」とか「レッド・ツェッペリンの偽物だ」とか、罵詈雑言を並べ立て「こんなバンドが売れたら帽子を食ってやる」といった評論家までいたらしい。まだ粗削りとは言え、良い曲やアレンジが多く含まれているファーストアルバムを、正当に評価が出来なかった批評家たちは、凝り固まった保守的な音像に脳みそを支配されすぎて、フラットな感性でクイーンの可能性を見出す事が出来なかった(そのフラットさを持ち合わせていたのが、遠い東洋の10代の女子たちだったというのが、クイーンを最初にみとめた国=日本の誇らしげな部分だろう)

・・・とかくクイーンとプログレには、議論や論考が様々あり、似ているようで似ていない、交わりそうで交わらない、危うい関係にあるモノのような気がしているが、日本の気骨あるプログレ勢の中では、クイーンを取り入れたバンドが希少ながらも存在する。

1979年デビューしたMoon Dancerは日本屈指のキーボーディスト厚見玲衣がVOW WOWで有名になる前に在籍したバンドだ。デビューアルバム『Moon Dancer』収録の「哀しみのキャンドル」に、大仰でオペラティックな曲展開がQueenを感じさせる。

(厚見氏の後年のインタビューでは、Moon Dancerは、モダーンポップに類するジャンルと言っていたので厳密にはプログレではないのかもしれない)

1980年に関西から登場したNOVELAは、日本のプログレ界の中ではより耽美的存在でクイーンに近い存在だと思う。名盤の誉れ高い「サンクチュアリ」(1983年)収録の「ディヴァイン・コメディ」は、そのコーラスワークの作り方などに、はっきりとクイーン風が見て取れる。

少し飛んだ1995年、歌謡曲&日本のポップシーンを走ってきたTHE ALFEEのプログレ魂が炸裂した名盤『夢幻の果てに』が発売された。収録された「幻夜祭」では、重厚なクワイア風コーラスとオペラティックなサウンドが相まって独自のクイーン風サウンドが展開された。

※こちらは、貴重なオーケストラと合唱団と共演したライブ映像だ。

・・・日本、プログレ黎明期より日本人はクイーンサウンドとプログレサウンドの融合に格闘をしてきた。それぞれにおいて、特徴的なサウンドではあるものの、アーティストカラー全体の血肉にはなってはいないようだ。

そんな中2014年の日本プログレシーンに登場したALL IMAGES BLAZINGは、驚異的なプログレ×クイーンサウンドの融合に成功している。ジェネシスのような揺蕩う幻想的なキーボードプレイをベースに、ポップなアンサンブルや、レッドスペシャル的ギター・オーケストレイションが織り込まれた楽曲群は、まさにプログレアーティストとクイーンの奇跡の共演を夢に見ているようだ。

英プログレに比重を置きつつも、米国のYESと言われたStarcastleや、近年復活を果たしたアメリカンプログレのTouchなどの要素も多分感じられる、米英日のプログレ総合デパートのような有難みさえある。

また、彼らは関西出身のバンドでもあり、NOVELAやPageantと言った日本プログレ黎明期を支えた関西プログレ/ジャパンメタルシーンの血統も感じさせる。現在、最新作となる3作目『CRIMSON RED』をひっさげて精力的にライブ活動を行っており、2021年の日本プログレ界のオピニオンリーダー的な存在になりつつある事を予感させる。

➡DiskUnionの商品ページの解説

➡ALL IMAGES BLAZINGツイッターアカウント

冒頭にクイーンサウンドとプログレ、大衆性と実験性の共存の難しさを論じたわけだが、そのような身勝手なリスナーや評論家の戯言を吹っ飛ばして、我が道を進む気骨あるバンド群の正統なる血統が、日本に息づいているという事実を、ALL IMAGES BLAZINGに見た思いだ。

ALL IMAGES BLAZINGのさらなる活躍を祈って――。

2021.05.04 Varuba

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