様々なアーティストの楽曲に垣間見られる、“クイーンらしい”サウンドメイキングを探し、拾い集めて来たのだが、星の数ほどのアーティストに影響を与えた、そのサウンドは今日では、ひとつの音楽ジャンルとも言うべき方向性を持っている。
そんな中で“パロディ”といった次元を飛び越えて、クイーンサウンドを血肉化したミュージシャンが、ごくわずかだが現れている(既に消えてもいる)
クイーンらしい“アトモスフィア”を体現しながらも、あくまで“オリジナルのメロディ”であるという部分にこだわったThe Beatlesで言うところのThe RutlesやKlaatuのような音楽のクイーン・ヴァージョンを、この10年、血眼となって僕は探して来たわけだ――。
この、10年間の中で、この曲はホンモノだっ!!?
と言える、クイーン遺伝子殿堂入りを果した、栄えある9曲を、ここにご紹介いたします。
目次
「The Mercurian Mystery March」 V
クイーン遺伝子と聴いて、ちょっとHRをかじった人ならすぐ出てくるであろう、このお二人。オランダのクイーン貴公子として90年代初頭の日本でもかなりレコード会社も力を入れてプロモートを行っていた。
1999年に発売された本作収録の「The Mercurian Mystery March」は、「The March Of The Black Queen 」風な楽曲で、当時としては高水準のクイーンソングとして重宝されていた。本国オランダでは、二人ともいまだ元気にクイーン風ソングを作り続けてくれていて嬉しい限り。
「Make my day!」 福山芳樹 永井ルイ
2001年に出た「ハムスター倶楽部 ソングコレクションアルバム OLA!OLA!OLA! 」という、アニソンアルバムに収められている楽曲。
作曲は永井ルイ・歌うは福山芳樹。クイーンマニアの二人が作り出した世界感は、暑苦しくも華麗な世界。サウンドの決め細やかさも含めて、当時ポップマニアの間ではかなり評判となりました。
当時クイーン好きな著名なデザイナーさんとこの曲の素晴らしさを、興奮気味に語った事が昨日のようだ―。
「Murder at the Opera」 The Blooms
2009年に、アメリカのインディーバンドで面白いのがないか、Myspaceを掘り返していて出会ったバンド。
その、初期クイーン風のアトモスフィアに、一発でノックアウトされたのだ。その後、少しだけ、iTunesなどで楽曲が買えたり、動画がアップされたりしたが、現在はおそらく活動休止してしまっている。
近年のバンドではかなりの突然変異、そして超無名。
「Hardware Store」 Weird Al Yankovic
2003年にアルバム「Poodle Hat」に発表された今作。ボヘミアン・ポルカなど何かとクイーン絡みのコンテンツを繰り出してくる彼の、クイーン愛が最高潮に達した作品ではないだろうか?
そのポリフォニックなサビ部分や、ビデオのオマージュぶりなど、パロディの領域を飛び越えて、超秀逸なポップソングになっている。ホームセンターで売っているモノを羅列するだけという、まったくの荒唐無稽感も素晴らしい。
「Let Me Down」 JETLINER
90年代初頭に、ヴァレンタインなどと並び評されたMozart。御大ロイ・トーマス・ベイカーをプロデューサーに据えて、3枚ALを制作したが、あっという間に解散してしまった。
その後、ボーカリストの“アダム”こと、アダム・パスコウィッチ(Adam Paskowitz)が、組んだバンドの二枚目のアルバム「Space Station」2005年作のリードラックがこちら。
かなり、見落とされがちな一枚だが、その抜けたサウンドと、レンジの広いボーカルが、なんとも心地よい。アダム自身、元オペラ歌手という出自もあり、ファルセットもさる事ながら低音が、パールジャムのエディかと思わせるグランジ風な声まで、聴き応え十分だ。Mozart時代に課題であった演奏力も、Jeff Kluesner(ex MARIZANE)の力を得て、申し分ない仕上がり。前作ではあえてクイーン風を引っ込めたが、近作では吹っ切れて、丸々クイーン風味で突っ走ってくれている。
「Prefect Bacon Bowl」 (Queen Extravaganza)
こちらは、2013年にアメリカのCMに登場した一曲。ベーコンをボウル状にして食べれる器具のCMソングなのだが、その曲は、Queen Extravaganzaの仕業。
フレディのそっくり声で、注目をあびたMartelが、ロジャー・テイラーの仕掛けにより集められた、“クイーン公式”のトリビュートバンドの、オリジナル楽曲というわけだ。
クイーンというもののコマーシャリズムを端的に表していると言って良いし、楽曲の完成度もかなり高い。
「Dancing」 New Trolls
イタリアンプログレの大御所1978年作。60年代は、ビートルズに影響を受けたビートポップをやっており、70年代前半は、ELPやYesに影響されたプログレ一直線。70年代後半からは、クイーンサウンドに傾倒しながらも、ビージーズのサタディ・ナイト・フィーバーの影響を受けてディスコ風味も入れてみちゃったら、こんなん出ました!という代物。しかし、音楽的技術は高度そのもの。他の楽曲が、近年のモノが多いので、これを入れるかどうか迷ったが、70年~90年初頭の間では、白眉なクイーン影響度だし、CD再発のときに始めてこのサウンドに接した時は、クイーン以上の衝撃だった。
「I’ve Been To Hell And Back」 Peter Straker
すべてのクイーン遺伝子ファンがCD化を願ってやまなかった、オペラ座の怪人Peter Strakerの1977年作『This One’s On Me』。当時付き合っていた(?)フレディにプロデュースしてもらった愛ある一枚。
ロイ・トーマス・ベイカーも参加しているので、擬似クイーン感は半端ない。そしてのその異端感覚と、退廃感覚、シアトリカルさにおいても、クイーン以上のフレディの理想世界を体現していたのではないだろうか?「愛にすべてを」風な「Heart Be Still」も秀逸だが、こちらの2曲目の勢いのある楽曲を薦めておきます。
「S. ROCK」 Angelo Palmacci
イタリアの若きサウンドコンポーザー。youtube上で、自身が録音したオリジナル楽曲を披露している。そのクイーン傾倒度は、あらゆるサウンド面、そして声そのものもフレディに似ているという天分。
2014に発表したこの曲は、インストナンバーであるが、後期のクイーンがやりそうな、そして、ブライアンがやりそうな、ニクイ小技が散りばめられて、溜飲を下してしまった。
これからのyoutube発表楽曲に目が離せない一人でもある。
2015年9月29日
Queen遺伝子探究堂
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