【エルフィン業界最右翼】谷山浩子の『月に聞いた11の物語』~己心の扉を開く11個の鍵~

谷山浩子の最新アルバム『月に聞いた11の物語』が、2017年9月13日に発売された。

ファンタジック、ミステリアス、メルヘンチックなど谷山浩子の音楽世界を表現する言葉は数多とある。

今作は、それらの言語感覚は超越され、谷山世界の深淵を垣間見させるような、独特な恐怖感を持って、聴く者に襲いかかってくる。

覗いてはいけないが、しかし、覗かずにはいられない。

谷山浩子が今回奏でたのは“とある世界を見れる者同士が結びつくのに、必要な音楽”でもある。

月の天使が導くかのように呈示された11のパスワード。
それらが、有機的に繋がって、己心の扉を開く鍵となる。

・・数曲の、雑感をごく簡単に。

01. きつね

一曲目から中近東な音階で、古い不思議な絵本に吸い込まれていくようだ。
ワルツ調にたおやかに歌われる楽曲は、谷山世界の真骨頂。

“この宇宙をお創りになった神様はどんなクズでも愛して下さる。でも僕はクズですらない”

という、神の愛を拒否するかのようなひねくれ者の歌。

後半ではそんなひねくれ者を諭すような内容で、谷山浩子は宇宙の神をも超越した。

03. 旅立ちの歌

2013年にMEGに提供した楽曲だ。冒頭の歌詞が“東の空”から“古い港”に変更されている。

RPG的な叙事詩を想起させる、中性ヨーロッパ的な幻想をかきたてる曲だ。

古い港とした事で、大航海時代をも連想させる。

05. 白雪姫と七人のダイジョーブ

ラスヴェガスの不安について歌った歌!先日おこったラスヴェガスの銃乱射事件をつい想起してしまう。

コミカルな曲調とあわせて、“ダイジョーブ”というのが、逆に不安を掻き立てる。


06. 無限マトリョーシカ

からくり人形楽団をフューチャリングしたロシア・グラムロック・メタルな、何とも得たいの知れない曲調。

ROLLY&谷山のからくり人形楽団、待望の3作目を想起させる仕上がり。

キーボードがディープパープルしている。谷山浩子に70年代的ロックエッセンスを加えるのは、全て◎


07. ジリスジュリス

「てんぷらさんらいず」のような80年代的テクノポップを想起させる曲調。
一日も早く、NHKのみんなのうたになってほしい。アニメーションで見てみたい。

09. 螺旋人形

長年のパートナー石井AQ氏の魔訶不可思議な楽曲。
編曲は、谷山が敬愛するクーロンズゲートの蓜島邦明氏が担当。
本作中、一番恐ろしい世界観。


10. 秘密の花園

新居昭乃との共作曲。エルフィン楽曲を作り出したら右に出るものがいない二人の共演。

エルフィン業界最右翼のお二人の奇跡のコラボ曲。

愛する人間の男性にいたずらして殺してしまう。

谷山と新居の、二人の妖精が歌う、空恐ろしい歌。

其々のエルフィン代表曲を紹介しておこう。


11. 金色野原

手嶌葵への提供曲。
最後がこの曲で、救いがある。
荘厳なシンセサイザーが抒情的だ。

・・以前、手塚治虫『ブッダ』の後書き批評に、

“ここにはペン先から流れ出るインクがあるだけではない。現実が記録されているんだ”

というのがあった。

“このCDにはスタジオで録音された音があるだけではない。谷山世界の奥に秘沈された超現実が、こぼれ出てきてしまっている”

ファンタジーの奥の奥に隠された真実の爪。

超現実。

その、真実の爪をもぎ取る事が、あなたには出来るだろうか・・・。

2017吉日 varuba

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