オリジナルメンバーによるビーチボーイズ奇跡の再結成盤「ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ~」を繰り返し聴いている。
永遠のマスターピース『ペットサウンズ』や、闇に葬られたティーンエイジシンフォニー『スマイル』にやられたビーチボーイズファンの自身にとって、このアルバムはちょっと捉えにくい一枚でもあった。
ブライアン・ウィルソンの完全プロデュースという嬉しいニュースではあるが、明らかに若かりし頃のソングライティング力や、才気を失っているブライアン。
美しいファルセットさえも老化には勝てず、老醜をさらしている昨今、果たしてどれほどのサウンドの完成度が期待できるのか?
また、長年ハーモニーを重ねてきたメンバーのミラクルは大いに期待しつつも、、
◎単純な懐古主義的なモノに納まってしまうのではないか?
◎カールやデニスのいないビーチボーイズの紡ぐハーモニーはどうしても聴きおとりしてしまうでのはないか?
さらに、長年訴訟問題などで、確執を抱えてきたメンバーが、再び同じステージに立ちアルバムを作成するという、ある種の“絆の復活的”な美名に惑わされ、肝心なサウンドの芸術性は、どうなのか???
・・・などなど、聴く前からハラハラドキドキしながら、耳を傾けた。
一通り流して聴いて、正直ピンとこなかった。やはり、嫌な予感が的中してしまったかなぁ・・・。
『イマジネーション』期のブライアン・ウィルソンのソロアルバム的なポジティブさはあるものの、ペットサウンド、サンフラワーなど、当時の名盤ほどのサウンド的工夫は伝わって来ない。
アル・ジャーディンのボーカルは相変わらず若々しいけど、ブライアンとマイクの声は、年を取ったと感じる、などなど。
しかしながら、タイトルトラックの「ゴッド・メイド・ザ・ラジオ」はオールディーズ的雰囲気が漂うも、ハーモニーアレンジが素晴らしく、ついつい何度も繰り返し聴いてしまう。今度はヘッドフォンで歌詞カードを眺めながら何度も何度も、試聴してしまう。
ん?、、あれ?、、、、、この感じ、なんか、以前も同じ事をしたような、デジャヴュ感。。。
そうだ!!
「ペットサウンズ」を初めて聴いた時もこんな感じだった。
初めて聴いた時はなんだか、よくわからず、悔しくて、何度も聴いているうちに止めれなくなったんだ!!
③「今がその時」で、
“ステディな関係に戻ろう” と。
④「スプリングヴァケーション」で、
“僕らはまた一緒になれた”
“過去は置いてきた”
と歌われた時に、まるで、ビーチボーイズの50年が、すべて計算されて、このアルバムに終着したようなコンセプト感を感じずにはおれず、感涙しつつ目頭があつくなった。
⑩「バックアゲイン」のブルースジョンストン風大人メロウなソフトロック的サウンドは、良く聴くとブレイクや転調がありハイセンスなアレンジだ。
⑫「過ぎゆく夏」ではペットサウンズを思わせるサウンドをちりばめながらも、
“僕らは生き死んでいく過ぎ去った昨日の夢を見る”
と歌われた時には、自身の余生を感じながら歌うメンバーと、逝ってしまったカールとデニスに思いをはせながら、残されたビーチボーイズ達が全力で、ハーモニーを紡いでいるのだという事がわかった。
・・・・・やばい。
この「ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ~」は、単純なビーチボーイズ再結成のメモリアルな盤を超えて、永遠のマスターピース『ペットサウンズ』に勝るとも劣らない、ありえないほど悲しく切実で美しい50年の悲喜こもごもを乗り越えてきた爺ボーイズにしか創りだせない、コンセプチュアルな“最高傑作”なのだった!!!
2012年6月吉日 Varuba