『暴虐のからくり人形楽団』~歪んだ王国を築きあげたROLLY&谷山浩子の超絶名盤~

谷山&Rollyの待望二作目『暴虐のからくり人形楽団』を聴いている。
否、聴く事を止められないでいる・・・

前作から、しっかりパワーアップした揺るぎないダークメルヘンな世界観は、変化球を用いる事なく(否、音楽そのものが変化球なのだが・・)真っ向勝負で、リスナーの期待+αの世界を顕現してくれた。

芸歴40周年の谷山と今年50歳を迎えるRolly。
円熟のエンターティナーの2人の底力に、余裕と革新が加味されて、リスナーをからくり仕掛けのフェアリーテイルの異次元へ誘ってくれる。

前作では、まだどこかゲスト風で紳士を装っていたRolly伯爵が、今回は、完全に我がモノ顔で暴虐の限りを尽くしている。その暴虐ぶりを微笑んで見守りながら、更なる暴虐をかぶしてくる谷山女史の姿がまた恐ろしい。また、前作では、構築性を高めていたのに対し、今作ではよりライブ感が重視されている。2人の融合度が高まっている証左だろう。

・・・以下個別楽曲の雑感を少々。

1. ウミガメスープ
冒頭から、しっかり“暴虐”ぶりが発揮されている。
Rollyが最近発表した歌謡曲のカヴァーアルバム『グラマラスローリー』収録の「マッハバロン」のOPのギターリフがフューチャーされたグラム・へヴィ・ロック風なアレンジと、原曲のメルヘンなアレンジとのバランスが絶妙な一曲。

2.  ハサミトギを追いかけて
ニューウェーブ風のサウンドではあるが、ロジャー高橋のドラムソロが素晴らしい一曲。
ついつい、カメラ万年筆時代のムーンライダーズを想起してしまう。

3.  意味なしアリス
谷山世界の真骨頂である不思議の国のアリス的作品。
原曲は大石昌良とのデュエットであるが、今作ではRollyがアリス世界の怪しい住人を演じている。
より、マッチした仕上がり。

4.  人魚は歩けない
こちらも、グラムロック風のハードなアレンジに。2人の声のハモリも決まっている。

5.  手品師の心臓
ファイナルファンタジー的なRPG楽曲。プログレ風でもあり、不思議なメロディが乱高下する。
前作のエルフィンの流れを組む一曲だと思う。

6.  歯ぎしりがとまらない
卍の楽曲を谷山がオリジナルの朗読を加えカヴァーしたもの。
この朗読部分が恐ろしい。。
マッドサイエンティストに淫する子供?この曲はR15にした方が良い?

7.  KARA KURI BOY
前曲に対するオマージュのようなRollyのオリジナル曲。

8.  楽園のリンゴ売り
これは、谷山ファン全員が待ち望んだキャスティング。リンゴ売りの蛇を、Rollyが演じている。
ぜひ、CGで蛇になったRollyの演じる姿を見てみたいものである。

「いかがです もしよろしければ
極上の酒もある
言い知れぬ深い酔い心地 誘う
リンゴの魔力
わたしどもの店の 直営の工場で
大量に毎日 作られておリますので
いくらでもあります おかわりもご自由に
おや、お客さまどこへ?
そんなにフラフラで」

・・・上記の部分の怪演は天本 英世をも凌駕する。

9.  しっぽのきもち
「暴れリス」と呼ばれる、ギターソロが聴きどころ。レコード時代であれば、針が飛んだと思う。

10.  からくり人形楽団ソレントへ
これも、オリジナル楽曲。
アレンジにユーライアヒープの「ウィザード」的なアレンジが聴ける。

11.  ある楽団員の回想
こちらも今作のオリジナル作品。怪しくシュールな朗読作品。

12.  王国
1992年発表の『歪んだ王国』収録のリードトラック。『歪んだ王国』発表時、日本はバブル景気が陰りを見せていた時期で暗い影が忍び寄っていた時代だ。
そんな時代相を谷山風に表現したアルバムではないだろうか?
また歌詞の中では、“他に住めるところがふたりにはない”と歌っており、歪な日本の音楽シーンの中で、長年地位を築いて来たRolly・谷山の住む世界が現在の『からくり人形楽団』に結実していると読むと、深い味わいがある。歪んでいるのは、2人の世界なのか?ハタマタ2人を取り巻く世界の方なのか?

13.  あやつり人形
谷山オリジナルのシャンソン風の楽曲。シャンソンもRollyの得意分野。アレンジ的には加藤登紀子にぜひ歌ってほしいと感じ、みのらぬ片思い的歌詞内容的は、しばたはつみに歌ってほしい。

14.  キャンディーヌ
レゲエ風のアレンジが素晴らしい。
こちらも、なぜかムーンライダーズを想起してしまう。

15.  不眠の力
今作を締めくくる、詩的で、谷山世界純度100%の楽曲。超大作のアニメ3時間映画のエンディングのロールバックで流れているような一曲だ。
それは、まるで地球の終わりを背景に、宇宙に最後の希望を打ち上げてそれが永遠に宇宙に彷徨い続ける様を見ているような。2001年宇宙の旅ような。手塚治虫世界のような。シュールな感覚だ。

・・・さあさあ、全宇宙のプログレッシブ・ロック・ファンの皆々様!
うち震え、咽び泣き、ありとあらゆる毛穴から液体を出しながら、
聴きのたうちまわるが良いのですぞっ!!

2013吉日 Varuba

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