『ROLLY&谷山浩子のからくり人形楽団』を聴いている・・・。
谷山浩子の独特な世界観。
どこか異国にあるような、ちょっと不思議な世界。
乙女のシュールな妄想の世界。
アンデルセンやグリム童話のような、子供時代に自分で勝手に作り上げていた世界。
未だ見た事のない不思議な世界にいざなわれるような、子供の時に夢に見た悪夢のような、
その中で、必死に冒険しているような、恐怖心と好奇心が混ざったような世界・・・。
稚拙な雑感を少々・・・。
02. パラソル天動説
全体的にファンシーなイメージ。原曲のファンシー要素に加え、ROLLYが加わる事でロック色がぐっと増した。03. 公爵夫人の子守唄
オープニングなどは、寺山修二の舞台を見ているような衝撃だ。“青ひげ公の城”を初めて見た時の衝撃に似ている。
04. ハートのジャックが有罪であることの証拠の歌
元曲と比べるとROLLYのファズギターで、やはりロック色に。また、怪人ROLLYのヴォーカルで二人の名演が光ります。
05. さよならDINO
ワルツ調の美しい曲。元曲は谷山女史の繊細な感性がよく出ている。ROLLYが加えた、間奏のオペラ座の怪人的メロがトゥーマッチ!!06. 素晴らしき紅マグロの世界
ROLLYの過剰な歌声が、原曲のキュートな谷山氏のボーカルとの対比が面白い。曲調を考えると、Rollyの歌唱法があっている??07. ねむの花咲けばジャックはせつない
マイネームイズジャックなどの、ムーンライダーズの70年代的アプローチを思い出す。
楽しい歌劇調の歌は、10CC的でもあるし、クイーン的でもある。
08. Elfin
ROLLYがクイーンのブラックサイド風に仕上げた楽曲。元曲はより、暗い森の奥で、魔女がひっそり歌っている感じが伝わってくる。からくり盤では、歌劇の途中に多くの照明やサウンドの中、ラスボス登場とでもいう風な、過剰なアレンジになってて、そちらもトゥーマッチ!! 間奏のスタッカート気味のギターのピッキングが、良いアレンジだと思う。今作の白眉的作品であろう。
09. KARA-KURI-DOLL~Wendy Dewのありふれた失恋~
乙女ごころのメルヘンな世界に忠実な元曲。ROLLYの卑猥なナレーションとの対比が絶妙!!これにOKを出した、谷山女史の懐の深さに乾杯!!10. 第2の夢・骨の駅
銀河鉄道の夜を思わせる今作。こちらも、からくり盤では、怪優ROLLYの味がふんだんに出ています。元曲は少女一人で迷いこんだ世界が伝わりより、恐怖心が増す内容。宮崎アニメの世界観にも通じるし、また、つげ義春の漫画を読んでいるようなドキドキもある。
11. 第5の夢・そっくり人形展覧会
こちらもナレーションベースの面白い歌劇。男性のナレーターの声がイメージがそれぞれで面白い。12. ヤマハ発動機社歌
おっと、本当にヤマハの社歌だったとは!!!元曲はファンファーレ調の社歌っぽい感じ!これを、グラムロック調にしてしまったのは、ROLLYの手腕のなせる技!!これは、キッチュでモンドで、ストレンジな一曲だ!!
14. ねこの森には帰れない
谷山女史の出世作。発表から、30年以上たっているのに、谷山女史の少女性が、全く損なわれていない事に驚愕。からくり盤では、ギターソロも含め、豪華なアレンジに変身。
・・・と、聴いてきましたが、改めて今作の選曲は、ROLLYが行ったのではないかと思うほど、谷山浩子の世界にROLLYが土足で入り込んでしまっている。
そこが、お互いの信頼感と、キャリアを積んだアーティスト同士の懐の深さを感じずにはいられない。
モンセラ・カバリエとフレディ・マーキュリー級の、異色コラボが、新たな次元へとファンを導くかのように、今作のそれも、新次元の扉を見事に開いている。
谷山浩子ファンには、ROLLYのグラムロックや寺山修二風の怪しいロック演劇の世界に引きつけ、
ROLLYファンには、谷山女史の、不思議なメルヘンでファンシー、優しくも怖い世界へと誘う。
消費社会に翻弄されて疲れきっているぼくらの心に、
強力な非消費の芸術力を、
表現の真実を、
流し込んでくれる。
交わりそうで、交わりきらなかった二つの世界が、見事に融合した今作は、ROLLYがライナーノートに書いている通り、日本ロック史に燦然と輝く、名盤・迷盤として、殿堂入りを早くも果たしているに違いない。
2012 吉日 Varuba