時は、2022年2月21日
所は、渋谷PARCO劇場
一切の予備知識なしに観劇(&感激)した舞台『ロッキーホラーショー2022』の特別追加公演。
しかも、最前列(汗)
リチャード・オブライエン版の映画『ロッキーホラーショー』もまともに観た事のなかったワタクシが、あの悦楽と退廃とグラムロック歌劇カタストロフの興奮の坩堝へと、宇宙大のエロティシズムの蟻地獄へと、引きずり込まれた模様を、此処に書き残す。
(注*ROLLYファンの末席に名を連ねる不信心者の、超私的な書き記しにつき、思い込み・記憶違い・甘い推測が混ざっている事を事前に陳謝しておく)
舞台『ロッキーホラーショー』は、ROLLYが関わってから今回で27年になるという。
また、両性具有の変態宇宙人フランク・フルターを演じる為に産まれて来た古田新太氏も、今回でRHSを卒業するという幾重にも意義深き公演。作品そのものに多くの熱狂的ファンがいる事でも知られるこの舞台は、RHSの生みの親リチャード・オブライエンが、ミュージカル俳優としてくすぶっていた1973年当時に歌ったデモテープが、源流になっている。
・・この荒唐無稽なスペース・SEX・オペラが、時空を超えた2022年の日本で超豪華なキャストと演出で、超プラチナチケットとなり公演されたわけだが、そのあたりの諸々はすべてパンフレットで得た知識。
個人的には、今回のRHS2022の音楽監督をROLLYが担っているという点。
すかんち盟友の小畑ポンプ氏がドラムで参加をしている点。
そして、バンドの面々も、ROLLYゆかりのミュージシャンで固められている点。
・・等々のサウンド面において、何やらROLLYの本気度をビンビン感じ、嫁を質に入れてでも、この肉眼と鼓膜に焼きつけなければならないと思い、馳せ参じた。
入場の時点で「ジギー・スターダスト」「カモン・フィール・ザ・ノイズ」「ゲット・イット・オン」がBGMで流され、この舞台がグラムロックへのオマージュなのだと理解した。
・・・そして、幕が上がるや否や、一気にタイム・ワープ・アゲイン!!
コロナ禍で声を出せないのが丁度良いと思うほど、豪華キャストとROLLY率いる ロッキーホラースペシャルバンド の熱量が限界を突破しており、五感で受け取るアンダーグラウンドな総合芸術の極致が、この日のPARCO劇場に顕現したっ!!
特筆すべきは、何といってもROLLYの八面六臂の活躍だろう。
音楽監督、訳詞、バンドでのギター演奏、まさかのガリガリロッキー役&モア・・・
演劇実験室『天井桟敷』でいう所の、寺山修司、JAシーザー、悪魔の家の名ギタリスト森岳史、怪優サルバドール・タリ、根本豊・・etcの役どころを一人で担っていたという事実だ。これはROLLYにしか出来ない離れ業であるし、氏なくしては存在する事の出来ないロッキーホラーショーだった!
(不肖なROLLYファンを自認していながらも、今までRHS観ていなかった自身を強く恥じ、猛省。観劇後、涙ながらに滝に打たれ、お百度参りをしたのである(ウソ))
幕間に流れたマルコシアス・バンプの「薔薇が好き」やイエローモンキーの「アバンギャルドで行こうよ」や女王蜂の「ヴィーナス」も、日本のグラムロック文化を牽引してきたROLLYが音楽監督だからこその説得力が半端なかった。
そして、満を持してすかんちの「恋の100 000$マン」が流れ、始まる後半戦。
肉体改造されたロッキー役の武田真治氏のインスタでも一部舞台裏が公開され、キャスト達の一体感、この舞台への愛情がひしひしと伝わってきた。
後半に行くにつれて、ロッキーホラースペシャルバンドのボルテージも最高潮に。
2003年のROLLYソロ作『鋼鉄のハードロッカー』に収録された「Rock’N’Roll TV Show(仮)」のメンバーが、今回も色を添えた。
キレキレの高音コーラスでお馴染みのムッチリシスターズ(原田千栄さん・高仲尚子さん)のお二人は『鋼鉄のハードロッカー』のレコーディングにも参加。HEESEY WITH DUDESの「CAMDEN TOWN」でも最高の歌声を披露。日本のグラムロック・コーラスでは右に出るモノのいない最強のお二人だ。
舞台RHSもエンディングの前後では、ロッキーホラースペシャルバンドの独壇場と化した。
後光を浴びながら奏でるROLLYのギターソロは、フラワートラベリンバンド『SATORI』での石間秀機のサイケデリアが空間を支配したかのようだった。
更にはすかんち名盤の誉れ高い6th『DOUBLE DOUBLE CHOCOLATE』(95)収録の「必殺のハードラブ」のリフが、バリバリと切り込んでくる。
“小麦色の肌にキスして” と歌う沖縄音階ハードロックのこの曲は、今は亡き飯島愛さんに捧げた歌である事はすかんちファンなら存知の事実だ。
ロッキーホラーショーでROLLYの音楽世界に初めて触れた方には、すかんち『DOUBLE DOUBLE CHOCOLATE』(95)と、ROLLYのソロデビューアルバム『ROLLY’S ROCKROLLLY』(96)はめくるめくグラムロックオペラ満載なのでぜひ聴いてみて頂きたい。
RHSエンディング近くで、ナレーター役のROLLYによる、
“地上を這いずりまわる人間という昆虫たちは、愛という謎の物質に翻弄されている~”
と言う口上は、リチャード・オブライエン版の映画『ロッキーホラーショー』でも似たモノが登場するが、PUFFYの「たららん」をROLLYがカバーしたヴァージョンにも入っている。
(この「たららん」も、ディコラティヴなクイーン世界満載の名カバーだ!)
RHS2022も、大団円を迎える頃には、ロッキーホラースペシャルバンドのサウンドは、重厚で濃厚なアレンジへと移り変わり、ROLLYの最高傑作『2001』収録の自叙伝的ロックオペラ「どてらい男(ヤツ)」のような様相を呈していく・・・。
・・・正直、舞台『ロッキーホラーショー』でここまで、ROLLY世界、ROLLYサウンドを体験できるとは思ってもみなかった。
リチャード・オブライエンの原曲がありメロディやアレンジは踏襲しているのだが、そもそも、それ自体がすかんち、ROLLYサウンドの血肉に今までなってきた事実もあり、2022年版のRHSで音楽監督に満を持してなったROLLYのDNAから迸り出でるサウンドの数々は、もはやROLLY世界以外の何物でもなかった。
PARCO劇場の中に宿った胎児が、母親の胎内を食い破って一気に成長し、その母親をも喰らい、血肉に変え、己のクリエイティヴへと昇華・メタモルフォーゼさせたような、言語に絶する大迫力を感じてしまった!
演出の中で小ボケのセリフで “これはROLLY HORROR SHOWだ~” というセリフがあり、フランク・古田氏にツッコまれていたが、ボケでもなんでもなく、まごうかたなき『ローリー・ホラー・ショー』となっていた事は、ファンならずとも認める事実だった!
この、ROLLYの出生の本懐とも言うべき、舞台『ロッキーホラーショー』2022は、本当に(×100億回)公式レコーディング盤としてCD化・DVD化を望むモノである。
そして、海を越えて、遠くロンドンや海外にローリー寺西という希代のグラムロック変態エンターティナー、オマージュニストの存在を届けたいと願うばかりだ。
・・それまでは、2014年のROLLYお年玉&Orquesta Libreインストア版の二つの「Science Fiction/Double Feature」を聴きながら鼓膜を満たそう。
・・・最後にROLLY氏の27年分の情感を込めたインタビュー動画も、改めて噛み締めておきたい。合掌。
2022年3月4日
クイーン遺伝子探究堂 VARUBA