【ブックレビュー】野尻抱介「太陽の簒奪者」

SF好きな人には言わずと知れた、ゼロ年代国内SFでも指折りの傑作と名高い本作。
それを今頃読んでるわけで、自分はSFファンといえるほどのもんではないと思う。

そんな自分がSF的にどうこうとか書けないので!(そういうことはAmazonのクチコミに書いてあるはず)
単に読書体験としてどうだったかを書いてみる。

もともと自分はシリーズものとか分厚い上下巻とか、壮大な物語が好み。
翻って本作は300ページ強と、決して大長編ではない。
しかし相当に密度が濃い。
時間的にも空間的にも大きなひろがりを持ち、 ハラハラドキドキにもカタルシスにも事欠かない。
読後の満足感は大長編のそれにまったくひけをとらない。

それにしても、発表時の2002年に読んだのと、いま読んだのとでは印象が全く違うのではないか。
作中の人たちがもつ、 異常気象や得体の知れないものへの不安感。
それが、あの頃よりは身近に感じられる昨今ではないか。
あの頃、「ベックレル」という言葉(本作に原子力宇宙戦艦の名前として登場するのだ)が日常にはびこるなんて、誰も考えていなかっただろうから。

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