【QueenSound論考】~サグラダファミリア的ガウディ建築とクイーンサウンドの類似~

Queenの音楽は建築物にたとえられます。

山田かまちは1975年当時クイーンの『オペラ座の夜』を初めて聴いた感想を“コンクリートの壁を直視したような音楽だ”と自身の日記に綴っています。

西洋音楽と東洋音楽の決定的違いのひとつとして、倍音の有無というものがありますが、倍音を扱わない西洋音楽はとても構造的にがっちりとしていて、視覚的には建築物のようなものと考えられています。

Queenの音楽もまさに西洋音楽の象徴のようなもので、フレディ・マーキュリーの超正確なピアノのクリック音だったり、ブライアン・メイの巨大な壁を作りだすかのごとく豪勢に鳴り響くギターサウンドはとても西洋的です。

さしずめQueenの音楽そのものが、彼らが住む宮殿のごとく、立派で頑健な建物だったに違いありません。Queenの音楽を聴いていると、サグラダ・ファミリアのようなガウディの超一流の建築物が擬人化し襲い掛かってくるような錯覚に陥ってしまいます。

そんなQueen音楽の建築構造上の特徴をごくごく簡単に説明すると……

 (1) コンクリートのような分厚い声の塊

幾重にもオーヴァーダヴィングを繰り返し、コーラスを重ね、それがとてつもなく美しく響く、Queen独特の音です。

ゴスペルグループのようなその場にいる人間のみが声を出して作り得るものではなく、スタジオ作業の中でのみ生まれるアンチヒューマニックでプラスティックな音、これがQueenサウンドの醍醐味あり、彼らの音楽を頑健な建築物にしている壁なのではないでしょうか。「ボヘミアン・ラプソディ」や「バイシクル・レース」が顕著な例で、分厚く重ねた声のコンクリートで塗り固めた、Queen独特の音空間を創出しています。

このようなサウンドを受け継いだアーティストはと言うと、Queenと同時期に活躍した、
カーズの『錯乱のドライブ』や、

7~80年代アメリカンロックを席捲したジャーニーの『エヴォリューションズ』

などに、似たようなコンクリート的ハーモニーサウンドが現れています。

しかしここで気がつくのは、二枚ともロイ・トーマス・ベイカーのプロデュース作ということ。

ロイは初期クイーンサウンドの立役者です。このコンクリート的構造はロイがクイーンに持ち込んだものと見る事が出来ます。

ロイが持っていたセメントを超完璧主義者のフレディが、職人のように綺麗に繊細に、尚且つ力強く固めて行った末に出来上がったのが、このコンクリート的構造なのではないかと思います。

(2) バロック様式に影響をうけたフレディの華麗なる曲調

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バロック = “ゆがんだ真珠、怪奇趣味”

の意味をもつとおり、ガウディのバロック建築にはゆがみの美学が反映されています。

フレディ・マーキュリーの持つ才能の中にもバロック的要素が多分に含まれています。

『QueenⅡ』の起伏の激しい組曲的展開などに、ロック+非ロックといった一筋縄ではいかない、しかしながら完全な美しさを保った“ゆがみの美学”が見事に投影されています。このバロック趣味こそ“華麗なるクイーン”の最大の魅力であったと思われます。

実際フレディの作る曲には非ロックの要素が多分にあり、オペラやクラシック、ラグタイム、シャンソン、ワルツetcといった洒落た退廃的なアート感覚、怪奇趣味のようなものが多く反映されていました。

(3) 乾いたコンクリートの隙間を埋める“レッド・スペシャル”

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数百年間自宅の暖炉で使われた木材をつかってブライアンが作り出した魔法のギター“レッド・スペシャル”。

このギターのねばねばとした音色が、乾いたコンクリート・コーラスのつなぎ目を接着する見事な役割を果たしていました。

また、ギター・オーケストレーションとも言われるように、コンクリートのまわりを、さらに何重にも塗り固めて、クイーン音楽という建築物をより強固にし、その耐震性、耐久性を強めていったのだと思われます。

(4) 数学的に計算された、ゆるぎない鉄筋。

ガウディ建築の設計法

ガウディの建築物は一見、バロック趣味のゆがみの美学からして、その骨組みのもろさが予想される所ですが、現在の最新の建築科学を持ってしても最高の耐久性を兼ね備えた建築技法で設計されています。

Queenのリズム隊の二人は、元々、ジョンが数学教師で、ロジャーが医学者、さらに、ブライアン・メイは宇宙学者。


そういった事実からも緻密に計算されたリズムワーク、云わば“コンクリート中の鉄筋”がしっかりとしていたからこそ、フレディやブライアンが好き勝手に建造できたのではないでしょうか?

ハイハットの手数が多いことで有名なロジャー・テイラーは、まるで、建築用の釘やビスを、一生懸命打ち込んでいるかのようです(笑)

また、寡黙で知られるジョン・ディーコンのベースラインは、彼の感情同様に乱れることがありません。

そんな難関なQueenサウンドづくりに挑戦している、ミュージシャンやエンジニア、プロデューサーを“クイーン遺伝子”と呼び、これからも探求して行きたいと思っています。

クイーン遺伝子探求堂
堂主VARUBA

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