【2024待望の来日決定!】ANGEL論 ~悲劇のポップハードの真の魅力とは!?~

エンジェルは2019年に20年ぶりの新作『Risen~華麗なる復活~』を、2023年には続編となる『ワンス・アポン・ア・タイム~禁断の天使~』を相次いでリリースした。2020年には来日公演も決定していたがコロナ禍で延期となっていた。だが、遂に、2024年7月に47年ぶりとなる来日公演が決定したっ!!

2024年のQueen+アダムランバート来日に心沸き立ったロックファンに「エンジェルまでもっ!?」と話題を振りまいている!!

かく言う私も、エンジェルと云う大物バンドの復活作を心躍る思いで聴いていたのだが、正直(若干ながら)グッと来なかった。フランク・ディミノのVoは70年代当時と比べると張り艶が足りない(2024年で72歳になるのだから当たり前だが)往年のグレッグ・ジェフリアのような大胆なキーボードアレンジが、聴こえてこない。一聴しただけでは、肩透かしを食らった印象だったが、なんか、悔しかった・・・。

「彼らの魅力は、こんなもんじゃないはずだ!」
「そもそも、エンジェルの魅力ってなんなんだろう?」

ってなことで、再考察スタート。


1st『Angel~天使の美学~』(1975)

すでに彼らの代名詞とも言える「Tower」で幕を開けるファースト。伸びやかなボーカル、抒情的なギターリフ、プログレッシブなキーボード、何より、バリー・ブラントのドラムがドライブしまくっていて、外見だけではなく演奏そのものが、高水準のハードロックバンドだと伺い知れる。

ファーストは70年代中期の米プログレ路線で、キーボード主体のスター・キャッスルのようなサウンドに似ている。

しかし「On & On」などは、後の“エンジェル節”とも言える、超キャッチーなサビメロと、ドライブするバンドサウンドのコラボが、既に開花している。

2nd『Helluva Band~華麗なる貴公子~』(1976)

2nd『Helluva Band~華麗なる貴公子~』でも、前作のプログレ・ハード路線を踏襲しており、8分を超える「The Fortune」などが目玉曲として挙げられている。

しかしキャッチーなリフが印象的な「Anyway You Want It」といった、次作から開花するポップ路線を予感させる楽曲が、しっかり存在感を出している。

3rd『On Earth As It Is In Heaven~舞踏への誘い~』(1977)

そして、1977年に傑作の呼び声高い3rdアルバム『On Earth As It Is In Heaven~舞踏への誘い~』をリリース。「That Magic Touch~痛快なる魔術~」が収録されているのが本作だが、それ以外にも数々のポップハード名曲が生まれている。

屈指の名曲なのが、リリシズム溢れる「You’re Not Fooling Me(奪われし魂)」ではないだろうか。ダンダカ、ダンダカ、ダンダカ、ダンダカ~、というリズムと、哀愁溢れるサビメロ、フランク・ディミノの高音ボーカルの美しさは他の追随を許さない。

さらに「Telephone Exchange(魅惑のテレフォン・コール)」の、アルペジオからの天翔けるボーカル。そして恐ろしいほどキャッチーなサビ。Bostonの「宇宙の彼方へ(More Than A Feeling)」を凌ぐ破壊力を持っていると言っても過言ではない。

これらの曲のクレジットを見ると(Meadows,Giuffria,DiMino)となっている事から、ギター、キーボード、ボーカルの3人が、強力なソングライターチームとして稼働していた事がわかる。

そして、満を持して、1977年に来日公演を果たしたエンジェルだが、プロモーターの倒産で公演が途中で中止になってしまったという。

悲劇のバンドと、当時は喧伝されてしまった模様だ。

4th『White Hot~天使の反逆~』(1977)

来日公演の中止、オリジナルベーシストの脱退等を経ながらも、1977年に発売された4作目『White Hot~天使の反逆~』は、USでのチャートアクションが良く、完全にポップハードバンドとしてのアイデンティティを確立したサウンド群。

中でも、一曲目の「Don’t Leave Me Lonely」は、近年のリユニオンのLiveでも良く歌われている定番曲で、コール・アンド・レスポンスが最高に気持ちいい。

5th『Sinful~蘇った天使たち~』(1979)

79年の5作目は、もともと『Bat Publicity』なるタイトルでリリースされるはずだったが、大衆が求めるエンジェルのイメージを推したいレーベル側とのイザコザもあり、結局は『Sinful~蘇った天使たち~』とのタイトルでリリース。バンド自身は、自らのアイデンティティをさらに強め、アイドルイメージからの脱却を図りたかったのかもしれない。

そんな経緯からも今作が、エンジェル史上の最高作で、楽曲の粒の揃い方が半端ではない。

「Just Can’t Take It」は、カントリータッチのハードポップとして、永遠に聴いていられるポップネスだ。

「You Can’t Buy Love」は、実にバランスのとれたミドルテンポの楽曲で、サビ前の五月雨式ハーモニーはSWEETを彷彿とさせる、クイーン遺伝子ファンには超絶ストライクな楽曲だ。

「I’ll Bring The Whole World To Your Door(新しき世界)」は、エンジェル節とも言える、ジェフリアのポップなキーボードから、泣きのメロディ。キャッチーなギターリフなど、円熟のエンジェルサウンドの極みのような楽曲だ。

これだけの楽曲群を繰り出しながらも、USでのチャートのアクションも今ひとつ。様々な軋轢から、バンドは、ここで一度、解散してしまう。


75年の『天使の美学』~79年『蘇った天使たち』の黄金期のエンジェル・サウンドを聴いていて感じるのは、とにかく“横ノリ”が気持ちいいバンドだという事だ。

ディープパープル的な英国のスピードハードロックではなく、エアロスミス的な豪快な野獣サウンドでもなく、あくまでキャッチーなKISSのようなポップハードだという事。カサブランカレコードのレーベルメイトKISSの対抗馬として売り出されたエンジェル。Kissを凌ぐ、ポップハードのソングライティングの才能を秘めていた。

フックの多い、ポップなメロディ重視のサウンドが、彼らの真骨頂であり、その耳で、2019年の復活作を再度、聴きなおすと、ガラリと印象が変わった!

『Risen~華麗なる復活~』(2019)

3曲目の「Shot Of Your Love」などは、サビ前の銃口がファイアする効果音に導かれるサビのキャッチーさは往年のような魅力に溢れている。

14曲目の「Don’t Want You To Go」も、サビのキャッチーなメロは、横ノリが気持ちよすぎる、往年の輝きそのままだ。

そして、何よりも素晴らしいのは、1975年『天使の美学』の一曲目「The Tower」を、今作の最後に持ってきている所だ。

47年の時を跨いだ、この曲の始まりと終わり。
そんじょそこらのバンドで実現できる味わいでは、決してない。

近年のリユニオンライブでも「The Tower」を演奏している。


・・・改めて彼らの残した楽曲群は、当時の評価やチャートアクション以上の実力がある。ただのアイドルバンドでも、ましてやクイーンのバッタモンでもなく、その恐ろしいまでにキャッチーな楽曲が、気持ち良くドライブしまくる最高のポップハードバンドなのだ。

今のエンジェルには、70年代の黄金期のソングライティングを担っていた、ジェフリアこそ参加していないものの、Voのフランク・ディミノと、Gtのパンキー・メドウスという主軸メンバー二人が、いきいきとプレイしている。

そのエンジェルが、コロナ禍を乗り越え、実に、47年ぶりに日本に来ようとしているわけだ!
1977年の悲劇の来日公演に続き、2020年の来日もコロナ禍により公演が延期になっていただけに、超待望の来日が2024年、遂に実現する!!

今度こそ、47年ぶりの “痛快なる魔術” が聴ける日も近い!!!!

2024.2.22 (加筆修正)
VARUBA(@DNA_Queen

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