『ROLLY’S ROCK WORKS』特殊音楽家ROLLYの苦難と挑戦の軌跡を辿る旅路


 “ROLLY’S ROCKシリーズ”の第4作目にあたる『ROLLY’S ROCK WORKS』が2019年5月21日にリリースされた。

 アーティストへの楽曲提供とは、本来、歌い手を引き立たせる為のモノであるため、提供者本人の個性はあまり活かせない・・・はずなのだが、ROLLYの場合は例外なく、一聴して氏の作品とわかる濃厚でディコラティヴなサウンドになっていた。

 今作は、過去にROLLYが提供したグラマラスでシアトリカルな10曲(+新曲3曲)を、ROLLY自らが満を持してリ・レコーディングした内容となっている。例えて言うならば、クイーンがエディ・ハウエルの「マン・フロム・マンハッタン」をカヴァーしたようなものだ。

 今作のレコーディングで脇を固めた布陣は、永井ルイ・長谷川智樹・松本淳の3名。RUI&ROLLYは、 日本クイーン遺伝子界でのレノン=マッカートニーだと言える。鉄壁のポップドラマー松本淳はリンゴ・スター、長谷川智樹はジョージ・マーティンと言えるだろう。そんな最強の布陣でリビルドされた『ROLLY’S ROCK WORKS』は、日本クイーン遺伝子界の『ホワイト・アルバム』であり『サージェントペパー』なのである。

 さらに、今作は1996年のROLLYソロデビューからの苦難と挑戦の軌跡を辿る旅路でもある。
衝撃のソロデュー作『ROLLY’S ROCKROLLY』の1曲目に10分のロック歌劇「恐るべきロックローリー」を登場させた事でレコード会社の怒りを買い三行半となったエピソードが語られていたが、その後もプロデュースワークという形に姿を変えながら、小出しに、時に過剰なまでに自身の作風を表現し続けた。

 今作の1曲目「天地創造」で “96年と同じ過ちを繰り返してしまった” と氏は語っているが、そこは確信犯として “仇を討った” という見方も出来る。

 今回、当ブログでは(レコード会社からの評価という側面では)辛酸を舐めた96年の『ROLLY’S ROCKROLLY』から、今作『ROLLY’S ROCK WORKS』までの23年間の発表順で楽曲を聴いてみたい。氏のクリエイターとしての進化の歴史と“クイーン遺伝子版ホワイト・アルバム”の価値と真髄を探求してみたいのである。

① 4曲目「恋のトレモロマジックダーリン」(八木田麻衣)

 1996年に東京パフォーマンスドール卒業後の八木田麻衣に提供した楽曲だ。この曲は、いかにも初期すかんちと言った曲調で、そのままShima-changが歌っていても違和感がない。この時点で、すでに盟友永井ルイのハーモニーアレンジは冴えわたっている。

 そして、直後の97年に八木田麻衣とRUI&ROLLYはユニット“ジャングルブッダ”を結成。手塚治虫をリスペクトした唯一無二のクイーン風アイドルプログレが誕生した歴史的瞬間だった。

 手塚治虫オマージュロックの流れは、99年の永井ルイ伝説のユニットRui’s Hipslips(ドラマーは松本淳(!))の『ヒミツの宇宙旅行』へと受け継がれていく。こちらも今作を語る上でのミッシングリンク的な作品となっている。


② 6曲目「恋のROCK’N’ROLL!DRIVE!」(藤木直人)

 2004年に藤木直人に提供した楽曲。「恋のトレモロ~」にも登場するが“夢なら醒めないで~♪”という歌詞が共通している点が面白い。メロディラインはすかんち時代のヒット作「恋のマジックポーション」風だが、藤木氏に提供したサウンドは同時期のアルバム『鋼鉄のハードロッカー』のようなノイジーなデジロック風サウンドになっている。

また、今作のアレンジが見事なまでにMudの「Tiger Feet」になっている事は聞き逃せない。


③ 7曲目「眠れる森の少女」(9nine)

 2007年にパフォーマンスガールズユニット9nineに提供した楽曲だ。中近東風のギターソロが印象的だが、このフレーズは隠れた名盤『2001』の「Operetta」内でも聴ける。

 本作のアレンジではミドルテンポに落としラジオボイスを入れるなど、より怪しい雰囲気を際立たせており、永井ルイのアレンジ手腕が発揮されている。また、すかんち時代の「ミラクルデイズ」を想起させるような味わいもある。


④ 9曲目「恋してキメル!」(KIMERU)

 テニスの王子様のエンディング曲でデビューした男性シンガーKIMERUに2008年に提供した楽曲だ。KIMERUに提供した曲は、THE SWEET風な爽快なグラムチューンだ。ギターソロは「Don’t Stop Me Now」をオマージュしている。


⑤ 10曲目「鏡の中のフェアリーテール」(高橋瞳)

 2010年に長谷川智樹とのタッグで高橋瞳に提供した楽曲。リードシングル「恋するピエロッティ」のカップリング曲としてひっそりと収録された一曲だ。

 こちらの作詞は高橋瞳が担当しており、より少女趣味が際立った世界観が生み出されている。サウンドは冒頭のウェスタンカントリー風なメルヘン世界で始まり、少女の成長を見守る擬人化された鏡の歌という谷山浩子にも通じるファンタジー世界。ギレルモ・デル・トロの映画『パンズ・ラビリンス』のエンディングをも想起してしまうほどの、孤高の少女世界だった。

 極めつけは中間部の “眩い劇場の~” からの大階段を下りてくるような、重厚かつ壮大なコーラスに彩られた宝塚的一大絵巻の大団円サウンドだ。このアレンジを聴くだけで、今作を買う価値がある。高橋瞳×ROLLY×長谷川智樹のケミストリーが最高の形で結晶した傑作中の傑作だ。長谷川智樹の力を得たROLLYは、これまで以上にシアトリカルな作品を生み出す事に成功している。


⑥ 3曲目「僕等のセンチュリー」 (ももいろクローバーZ)

 2012年のクリスマスソングとしてリリースされた、ももクロのオリコンNo1ソングだ。こちらもROLLYと長谷川智樹の共作となっている。

ブラスを多用したロイ・ウッド風のブギーロックはROLLY氏の十八番アレンジだ。

 因みに、2013年のももいろクローバーZアルバム『5TH DIMENSION』の中で「月と銀紙飛行船」を永井ルイが作曲・編曲、「宙飛ぶ! お座敷列車」を長谷川智樹が編曲を行っている。


⑦ 8曲目「宇宙のMON DIEU」(MEG)

 2013年にファッションモデルのMEGにROLLY&長谷川智樹のタッグで書き下ろした作品だ。
収録されたアルバムのテーマがRPGであった事から、よりファンタジックなロックオペラ風の作品となった。リリシズムあふれる小刻みなピアノプレイなどが耳に残る。「鏡の中のフェアリーテール」~「僕等のセンチュリー」~「宇宙のMON DIEU」と、ROLLY&長谷川智樹の蜜月が、いかに壮大で “QUEENⅡ的世界観” のロックオペラの生み出しに成功していたかがわかるだろう。


⑧ 5曲目「秘密のギミーキャット~うふふ 本当よ~」(PUFFY)

 2014年にRUI&ROLLYでPUFFYに提供した作品だ。「マンハッタンに恋をして ~キャリーの日記~」という海外ドラマのテーマ曲として作曲された。ELOの「Xanadu」テイストなオープニングと、80年代クイーン風のスタジアムロック感が融合した素晴らしくキッチュな作品となった。

 因みに、2012年にRUI&ROLLYでカヴァーしたPUFFYの「たららん」も、シアトリカルでサイケデリックな素晴らしいアレンジであった事も特筆されるべきだ。


⑨ 11曲目「恋するラヴレター」(豊崎愛生)

 2016年に声優の豊崎愛生に提供した楽曲。長谷川智樹がティンパニやストリングスなどのアレンジを施している。

 歌詞中に“はっぴぃえんどに憧れた~”“風をあつめて~”と出てくるように、寺西一雄少年のはっぴぃえんどへのオマージュが散りばめられている。


⑩ 12曲目「未来泥棒」(イヤホンズ)

 2018年にRUI&ROLLYでイヤホンズのアルバム『Some Dreams』に提供したシアトリカルな楽曲。ROLLYはインタビュー内でこの曲のテーマを、

“AIが進歩しすぎて完全に人間の立場になっているんだけど、かつて自分を作り上げた人間の心理に戻りたいと思っているっていう世界観”

と語っている。

 手塚治虫「火の鳥」復活編に登場する人間の心を持ったロボット“ロビタ”を思わず想起してしまう。すかんち『DOUBLE DOUBLE CHOCOLATE』に収録された名曲「ロビタ」のアンサーソングともとれる楽曲ではないだろうか。

 今作のアレンジの最後には「火の鳥」未来編に登場するような、年老いて酔いつぶれた主人公が無人ドームの中で“ジャングルブッダ”とつぶやいて終了する。

 それは、前述の97年に永井ルイ・八木田麻衣とで組んだユニット名の事だが『ROLLY’S ROCKROLLY』でのソロデビュー当時レコード会社の理解を得られず、苦節の音楽家人生を歩み始めた道程を振り返り、23年後の『ROLLY’S ROCK WORKS』のエンドロールでこれまでの歩みの総決算をしたような感慨もあり、つい目頭が熱くなってしまった――。

そして、その流れで聴く、今作用に書き下ろされた最新曲・・・・


1・2曲目「天地創造~Eejanaika」

「天地創造」は2014年にライブ会場限定で発売された『ROLLY’s BOOTLEG vol.2』に「奇跡」のタイトルでデモ音源が収録されていたので耳覚えのあるファンも多いはずだ。
続く「Eejanaika」は、23年前ソロデビュー時の仇を討った男が、すべてを許し、肯定してみせた、なんとも痛快なナンバーではないだろうか!


13曲目の「Dear Music」

こちらも、チルアウトとして用意した小品ではあるが

“時間の渦を漂って/たどりついたのさ”

と歌うあたり、今作の長い年月の創作の果てにたどり着いた、現在の穏やかな心象風景を表現しているかのようだ。サウンドはTriumphの「Suitcase Blues」をオマージュしている。


・・・・映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットでクイーン特需に沸く音楽業界でもあり、その渦中にジャパニーズ・クイーン・ライカ―の第一人者ROLLYが放った『ROLLY’S ROCK WORKS』は言わずもがな、我々の鼓膜をクイーン風味の濃厚アレンジで満たし潤してくれた。

 永井ルイ・長谷川智樹・松本淳という、日本最高峰のクイーンサウンドメイカーの共演も心躍る事実であり、日本クイーン遺伝子界の『この世はすべてショー・ビジネス』であり『キモノ・マイ・ハウス』を産み落としてくれた事への謝意は、筆舌に尽くしがたい。

 がしかし、それ以上に、96年ソロデビューから現在まで、日本の音楽業界の中で生き馬の目を抜くが如く、己の信ずるサウンドを表現し続けたROLLYの創作意欲に対し、最大の敬意を表する時、今作の持つ真の輝きが、放たれるのではないだろうか。

氏の更なる活躍を祈りつつーーー。

ROLLY’S ROCK WORKS収録主な発表アルバム
恋のトレモロマジックダーリン  (96) ROLLY’S ROCKROLLY  (96)
ジャングル・ブッダ (97)
2001 (01)
鋼鉄のハードロッカー (03)
恋のROCK’N’ROLL!DRIVE! (04)
ROLLY in Aoiheya 怪奇骨董音楽会 (05)
眠れる森の少女  (07)
恋してキメル! (08)
鏡の中のフェアリーテール (10)
僕等のセンチュリー (12) グラマラス・ローリー (12)
ROLLY&谷山浩子のからくり人形楽団 (12)
宇宙のMON DIEU (13)暴虐のからくり人形楽団 (13)
秘密のギミーキャット(14)
ROLLY’S ROCK CIRCUS (15)
恋するラヴレター (16)ROLLY’S ROCK THEATER (16)
ROLLY COMES ALIVE! (17)
未来泥棒 (18)
ROLLY’S ROCK WORKS (19)

2019年6月5日 VARUBA(@DNA_Queen

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