【ロビー・ヴァレンタイン】30年キャリアの到達点『THE ALLIANCE』 クイーン遺伝子的闘魂レビュー 。

2018年6月27日にRobby Valentineが日本における10作目にあたるフル・アルバム『THE ALLIANCE』を発表した。筆者はクイーン遺伝子を追い続け、かれこれ25年以上になるのだが、ロビーの91年のデビュー作『Robby Valentine』に青春の日々に出会った事が、自身のライフワークの源の一つになっている。

「The Magic Breeze」の魔法の風に吹かれたあの日から、既に27年の月日が経とうとしているのだが、こうして彼の新作に接すると、あの日のピュアな自分に戻ったような気持ちになる。オネスティな彼の音楽への姿勢は、30年の月日を跨いでも変わる事はない。

リスナーである自身、そしてロビーも、30年の来し方により様々な心境の変化や生活の移り変わりが生じている。ロビー自身の作風にもそれらが如実に顕れている。

今作の日本盤ライナーを既にお読みになったファン諸兄姉は、デーヴィッド・アイクという名に一種の“きな臭さ”を感じているかもしれない。ニューエイジ系などのUFO的なモノに精通しているイギリスのジャーナリストだが、どうやらデーヴィッド・アイクのレプティリアン宇宙人陰謀論が、今回のロビーのアルバムに色濃く反映している様子だ。

彼の作り出す音楽は、大変に素晴らしいモノである事に変わりないのは事実だし、今回のニューエイジ思想が、彼の創作の原動力の一つとなってくれた事には率直に感謝したいと思う。また、宇宙的な空想力が豊かなロビーならでわの一つの到達点として、静かに見守りたい。

レプティリアンの事はさておき、彼の真摯な音楽を丹念にレビューしてみたい。

『THE ALLIANCE』の冒頭を飾る「Judgement Day」は、スタジアム・ロック風のサウンドで、審判の日について歌っている。新しい明日を想起させてくれるポジティブな曲調だ。また、彼が長年共にやってきたバンドが、完璧主義者であるロビーのサウンドを実によく再現している。

続く「Black Dog」は、うつ症状を持っているロビーが、黒い犬の動画からインスパイアを受けて作った曲の模様だ。そのような、軽薄なファンが聞いたらネガティブに受け止めれる告白をさらりと作品に反映してしまう所が彼の誠実さと無垢さを表している。黒い犬の動画は、以下のモノだろう。

「Sons Of America」は、冒頭の高速クワイアが、本当にキャッチーだ。彼のポップセンスとコンポーザーとして能力が遺憾なく発揮されたアレンジだろう。ギターリフ的にはKissの「Detroit Rock City」を想起させる。日本盤ライナーにもあったが、ロビーのサッカーヒーローのJohan Cruijffに捧げた曲との事で、今後サッカー関連のTVアタック曲として是非、MAして欲しい一曲だ。

日本盤のボートラ曲として入っている「High As A Kite」は、スローなメロディアスハードなのだが、コーラスもアレンジも爽やかで、本当に胸がキュンとする素晴らしい一曲に仕上がっている。初期作品のような雰囲気もあり、日本のファンに向けたロビーからの心からのプレゼントなのだろう。98年の『No Sugar Added』に収録されていた、シンプルなサウンドの「Captain Eagle」に通じる、クイーンでいう所の「It’s Late」のような感覚だ。

「Soldiers Of Light」は早い段階から、シングル曲としてプレイした模様だ。トルコなどの中近東系の音楽をロックアンセムに直したサウンドだ。

以下では、同曲のオランダ語Verも、別アレンジで聴くことが出来る。

中近東系のサウンドとして、日本のロビーファンの間では神曲として崇めれている、95年の3作目『Valentine』収録の「GOD」の中間のオペラパートを、思わず想起してしまった。

そして続く「Eleanor Robyn」は、愛娘Eleanorちゃんの成長が早すぎてついていけないという、親バカ全開の(笑)なんとも微笑ましい一曲だ。全ての娘の父に刺さるキラーチューンではあるまいか。

2017年の来日公演の時「Over and Over Again」をEleanorちゃんが歌っており、それを愛おしく見つめるロビーの様子が記憶に新しい。

今作のハイライト曲のひとつ「Masters Of Our Minds」は、彼独自のSF思想に基づいた、善と悪の戦いが描かれている。
また、前述のレプティリアン宇宙人陰謀論をモチーフにしており、“変装した爬虫類”という歌詞にも顕著に顕れている。

ラスト飾る名バラード「Remember Who You Are」は、同じくデーヴィッド・アイクなどの思想から着想を得た楽曲のようだ。ロビーのバラードセンスが遺憾なく発揮された名曲となっている。
この曲の表題が、そのまま、今回のアルバムのコンセプトと言っても過言ではない。

Remember Who You Are = 自分が誰なのか覚えていろ!

周囲に騙されるな!
マスコミに洗脳されるな!
自分自身であれ!
世界の宇宙の真実に目を背けるな!

普遍のメッセージが歌われている。

・・・ロビーは、過去9作品でも、“類まれなアーティストシップ”に基づいて作品づくりをしてきている。クイーンに影響を受けたサウンドである事は、30年間一貫しているコンポーザーとしての姿勢なのだが、それはあくまでも技術としてモノであり、彼の作品の魂にはなり得ない。(ただ、今回のアルバムは、クイーントリビュートをやり尽くした後に制作された事に、重要な意味があるが)

ピュアネスやオネスティを宿すロビーのメンタリティには、社会や世界に対する疑問・欺瞞の返答として、バックボーンとなる思想が必要なのだ。それがどのようなものであれ。

その一つの結実が今回のアルバムとなったわけだが、前作まであったピリピリとした完璧主義な彼のサウンドと比べると、穏やかな何かゆったりとした空気も漂っているように感じられる。愛する家族や、彼を長年バックアップしてきたバンドメンバーの存在が、何よりも大きいと思う。

今年、2018年で50歳を迎えたロビー・ヴァレンタインだが、まだまだ彼は、世界的ビッグネームになれる可能性を秘めている。現在の、精力的な活動を維持しながら、日本=オランダだけではなく、世界中のファンにロビーの音楽を(過去のマテリアルも含めて)知ってほしい。そう願うばかりだ。

そして、ロビーの更なる活躍とご家族・バンドメンバーの健康も、切に願うばかりだ。

30年間、変わらぬ音楽への愛情を、クイーン遺伝子サウンドを、本当にありがとう!!!

Come back to Japan‼ Robby‼

2018年7月22日
クイーン遺伝子探求堂店主 Varuba

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