【書評】『18時に帰る』(1moreBaby応援団)を読んで。~無くなれ!家父長制の大家族風土!~

プレジデント社の『18時に帰る』(1moreBaby応援団)を読了。
世界一子供が幸せな国(と言われている)オランダの現在の働き方を調査した本だ。

昨今、日本社会では、働き方改革とか、同一賃金同一労働などが叫ばれている。
大手企業の大半が派遣社員ばかりで、待遇格差も叫ばれている。
ブラック企業がサービス残業を強要し、労働者の精神を蝕み、皆がメンタルヘルスに問題を抱えている。

女性は子供の出産の為にキャリアを諦め退職をするか、復職しても前のようなフルタイムワークでバリバリと働く事は、子育てとの両立で難しいのが、今の日本ではないだろうか?

どれだけ制度を改革しようとも、日本には“残業こそ組織への献身”のような風土が厳然とある。
定時で帰ろうモノなら、後ろめたい空気が漂い、職場の一員としてはなかなか認められない。

“18時で帰る”という子育て世帯には当たり前の働き方が、精神風土の面で認められていないのが我が国日本なのだ。

オランダでは30年かけて、様々な試行錯誤の末に“18時に帰るのが当たり前”という社会風土を獲得した。

1982年に「ワッセナー合意」が採択される。
政府・労働者団体・企業の三者により、働き方を社会全体で変えていこうという意思決定がなされたのだ。

その中で、
・フルタイムワーカーの労働時間の短縮と早期退職制度
が決定され、労働時間の短縮へ大きく動きだした。
フルタイムの時間を削減し、その分をパートタイマーなどに回し、雇用を拡大しようという事だ。

日本でも正社員で回りきらない業務を派遣社員を雇って増員をしている大企業も少なくない。
しかし、感じるのは、派遣社員はあくまでも正社員のサブ的な感覚で、
正社員は夜遅くまで働き、抱えきれなくなった繁忙分を、派遣社員に仕事として分け与えている感覚が根強い。
そこには厳然と、意識の違いが存在しているし、格差や待遇も、風土としては厚い壁となって存在している。

オランダはというと1996年には「労働時間差別禁止法」が採択。
フルタイムとパートタイムワーカーの、待遇面の格差が撤廃された。
日本における同一労働同一賃金の、さらに上をゆく、同一労働同一条件が進んでいる。

そのほか、出産・育児休暇をみとめた「労働とケア法」や「保育法」などの子育て支援の法律も2000年代に採択されている。
日本のような育児休暇で職場に対して肩身の狭い思いをしないで済む法律だ。

さらにオランダの労働者の権利として、週に何日働くかは労働者自身に決定権があるとの事だ。
子育てや介護など、仕事に専念できない期間に、多めに仕事を休む事が可能なのだ。

オランダは短時間で業務を達成しないとならない為、
国民は徹底的に、生産性にこだわるようなり、GDPも上がる結果となった。
働きやすさ、子育てのしやすさを国をあげて推し進めた結果、出生率も上昇している。

そのようなオランダも30年前は今の日本のような状況だったようだ。

今の日本は夫が遅くまで働き、妻が出産と同時に退職し、育児に専念。
夫の育児参加は難しく、夫は過度な残業でうつ病に、妻は育児ノイローゼに、なんて家庭も少なくないのではないだろうか。
さらに、女性はキャリアを諦めざるを得ないし、夫は子供と接する時間が極端に減ってしまう。
核家族が厳然と定着した今の日本にも、古来の家父長制の大家族主義のような風土が、色濃くあるのが日本社会なのだ!(恐ろしい!)

職場にもよるが、やはり、職場・残業が最優先で、家庭は二の次という精神風土、献身の姿勢を評価する風土が、日本社会にはまだまだ根強くはびこっている。

その民族精神を改革をしていくのは相当に時間がかかると思う。

オランダが30年かけて勝ち取ったその風土に、日本もなったらいいのにと、強く感じる。

本書の『18時に帰る』というタイトルも、オランダでは普通の事すぎて本のタイトルにはならないだろう。
しかし日本では「何夢のような事を言ってるの?」というような感覚で捉えられる。

家庭・仕事・出産・子育て・男女・キャリア・格差、などいろんな都合をしっかりテーブルにのせて、皆が我慢しすぎる事なく、生きれる社会を日本もつくっていこうよ!!

※大好きなオランダのプログレバンド・フォーカスのライブ映像を貼っておきます(特に関係はありません)

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